資格の中には、登録・会員制度を取っているものがあります。
登録・会員にならないと、その資格の名称を名乗れないというものです。
登録・会員になった場合は、当然のように入会金と会費がかかります。
入会金と会費を支払っても、支払ったお金に見合うだけのリターンがあれば問題はありませんが、ほとんどのケースでは意味のない出費となっているようです。
民間資格にも有効な資格はありますが、なかにはデメリットのほうが大きいものもあります。
「国家資格と民間資格」、「業務独占と名称独占」
資格は大きく分けると、国の法律に基づいた「国家資格」と、それ以外の「民間資格」とがあります。
一般的には、民間資格より国家資格のほうが難易度と知名度が高いのですが、民間資格にも「日商簿記検定」や「実用英語技能検定」といった認知度と難易度が高い(1級)資格もあります。
民間資格の中にも、国家資格以上に難易度と価値が高いものがありますが、基本的に国家資格と比べればやっぱり見劣りします。
業務独占資格と名称独占資格
また、資格には、「業務独占」資格と「名称独占」資格といった分け方をすることもあります。
業務独占とは、特定の業務を行うためには、資格がなければできない業務をいいます。
例えば、不動産の取引では、契約の前に重要なことについて「重要事項説明」を行わなければならないのですが、重要事項説明を行うことができるのは、「宅地建物取引士(宅地建物取引主任者)」の資格登録している者だけです。
つまり、宅地建物取引士は、不動産取引の重要事項説明において、業務独占があるというわけです。
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対して名称独占とは、試験に合格した人でなければ、その名称を名乗れないというものです。
例えば、国家資格に「ファイナンシャルプランニング技能士」という資格がありますが、この資格試験に合格しなければ、ファイナンシャルプランニング技能士を名乗れません。
試験に合格した人だけが、名称を名乗ることができるので名称独占資格と呼ぶわけです。
名称独占資格には、独占業務がありませんが、試験に合格するだけの知識があるという証明になります。
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独占業務がある資格のほうが、強みがあるといわれていますが、業務独占資格のほとんどは国家資格です。
また、独占業務があったとしても、将来性がない分野の資格であれば、合格しても仕事がない可能性があります。
これからの資格選びには、将来性も考える必要があります。
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資格ビジネスの実態
資格ビジネスでは、よく分からない団体が一般社団法人の○○協会を立ち上げて、もっともらしい資格を作り、受講者に授業と試験を行います、そして、合格者には会員の勧誘を行います。
資格ビジネスの目的は、講座の受講料と受験料、そして、会員からの会費の徴収です。
意識高い系といわれる人ほど資格ビジネスに引っかかっていたりします。
簡単な資格でも合格すれば合格証という証が得られるので、自分に自信がない人も引っかかります。
会員登録性の資格などで、費用ばかり支払ってあまり効果がないと感じた場合は、会員をやめることも考えた方がいいかもしれないです。
以前、県が実施する失業者向けの認定講座の講師をしていた頃がありますが、失業者から資格やキャリアに関する相談も受けてました。
資格は仕事ありきで選ぶと失敗が少ないので、資格選びには目指す仕事と関連あることが重要です。
資格を取ることが目的になってしまう人は多く、こういう人は気づいたら資格ビジネスに引っかかっていたりします。
難関資格の代名詞の弁護士ですら3人に1人が食えないと言われているのに、得体の知らない団体が適当に作った資格を取得したらかといって、仕事が増えることはまずありません。
高い授業料と受験料を支払い、会員費まで支払ったというのに、残るのは「合格証という紙切れ」と誰も知らない「団体の会員証」なのはいかがなものか。
高い受講料と受験料
民間資格の中には、特定の講座を受講することを義務付けているものがあります。
典型的な資格ビジネスでは、こういった形式をとっていることが多いです。
趣味やけいこの延長線や、「誰でも資格が取れる」といった甘言で、資格の敷居を下げて、決して安くない受講料を受講者からふんだくります。
講座を受講しなければ、資格を受験することすらできないので、資格が欲しい人は仕方なしに講座を申し込むことになります。
でも、実際はその資格を取っても、資格自体が簡単なので評価されることはまずありません。そもそもその資格を知っている人がほとんどいません。
今だと「相続」や「お金」、「資産運用」といった分野が注目されていますが、これらの分野でも資格ビジネスが横行しています。
管理人も保有していますが、「相続士」「マネーコンサルタント」「住宅ローンアドバイザー」といった資格が人気です。しかし、どの資格も費用の割に役に立たないことが多いようです。
相続士や相続診断士を取っても相続の相談が出来るわけではなく、マネーコンサルタントになっても投資の助言は出来ず、住宅ローンアドバイザーを取っても住宅ローンの取次が出来るとは限りません。
紛争が起きている相続は「弁護士」か「司法書士」、投資の助言は「投資助言業」、住宅ローンの取次は「貸金業者」か「不動産会社」しか出来ないからです。
会員制の資格は維持費がかかる、費用対効果で考えよう
会員制の資格は、会員から得られる会員費が目的なので、資格試験の合格率は高めです。
会員制の資格で重要なのは、できるだけ合格率を高めにしておいて、多くの人に会員になってもらうことです。
そして、できるだけ長く長く会員でいてもらうことです。
国家資格にも、登録にあたって特定の講座を受講しなければならないものがありますが、登録するつもりがない場合は別に受講しなければいいだけです。
でも、資格ビジネスの資格は、講座の受講が受験資格だったりするので必須です。
受講後に試験がありますが、試験は簡単なので合格できます。そして、合格後は、安くない登録料を支払い、会員である限り費用を支払い続けることになります。
管理人も過去に勉強した資格に、相続、ローンに関するものがありますが、これらの資格は、受講料と受験料がかかり、さらに会員でいる限り会員費がかかります。
誰も知らない役に立たない資格を履歴書に書いても意味がないばかりか、相手によってはマイナスの評価を与えてしまうことにもなりかねません。
資格に詳しい面接官だったら、資格ビジネスに引っかかって可哀そうなどと同情してくれるかもしれませんが、採用にいたる可能性は低いでしょうね。
民間資格にも必須資格はある
ここまで民間資格の悪いところばかり挙げてきましたが、民間資格の中にも仕事をするためには取得しなければならないものもあります。
例えば、有価証券等を販売するには「証券外務員」の資格が必要ですし、生命保険や損害保険といった保険を販売するためには「保険募集人」の資格に合格しなければなりません。
これらの資格試験に合格して登録しなければ業務を行えませんが、これらの資格は国家資格ではありません。
証券外務員の試験も、保険募集人の試験も業務をするにあたって必須の資格なので、難易度的にはそれほど難しくはなく、むしろ試験に落ちたら周りから笑われると言われています。
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まとめ
・資格には、国家資格と民間資格がある。
・資格には、業務独占資格と名称独占資格がある。
・資格を取るなら独占業務がある資格の方が望ましい。ただし、独占業務にこだわり過ぎると先細り資格をつかまされるかも。
・民間資格には、高い講座料金と受験料が目的のものがある。
・合格率が高い資格はほとんど評価されない。
・会員制資格は維持費と見合うだけの効果があるか考えよう。
・資格が必須となっている仕事は思っているほど多くはない。
民間資格でも、維持費がかからないものならネタになってよいかもしれませんが、維持費がかかるものは費用対効果を考えた方がいいでしょう。